ストーリー画像-障がいがあっても波へ挑む!パラサーフィンってこんなに楽しい!
ストーリー画像-障がいがあっても波へ挑む!パラサーフィンってこんなに楽しい!

障がいがあっても波へ挑む!パラサーフィンってこんなに楽しい!

もうすぐ8月も終わりますが、まだまだ夏に取り残されていたいと思う人も少なくないのではないでしょうか。さて、8月25日は「パラスポーツの日」だとご存知ですか?「パラスポーツの日」は、障がい者スポーツの振興と、障がい者への理解を深める機会とするために認定された日です。

私たちKEENはパラスポーツへの熱い想いを持った『一般社団法人ユニバ』さんが主催し、2022年7月10日(日)静波サーフスタジアムにて行われた『第1回静波パラサーフィンフェスタ』の開催をサポートすると共に、スタッフもこのパラサーフィンフェスタへ参加させていただきました。

KEENが、このイベントをサポートさせていただくと決めたのは、アウトドアはすべての人のためにあると信じ、出自や性別、世代、個性を超えて誰もが、アウトドアをより身近でアクセスできる場所にしていくことを目指しているから。そして、主催団体ユニバの「障がいがあっても楽しめる世の中にしていきたい、ユニバーサルな社会にしていきたい」という強い思いに共鳴したことがきっかけでした。


それぞれの個性でライディングするパラサーフィンの魅力

みなさんはパラサーフィンと聞いて、どんなイメージを持たれますか?

・障がいを持った方もサーフィンできるの?

・障がいの程度は?

・サーフボードに立つことは難しいんじゃないの?

パラサーフィンを観たことがなかった私はそう思っていましたが、今回参加して驚いたのは、パラサーフィンは様々な障がいを持った方が参加できるスポーツであること。サーフボードの上に立つことがサーフィンではなく、波に乗ることがサーフィンなんです。障がいを持ってからサーフィンを始めた人も沢山いるんですよ。

パラサーフィンのクラス分けは大きく5つ。立って乗るクラス、膝立ちで乗るクラス、座って乗るクラス、うつ伏せで乗るクラス、視覚障害クラス。この5つのクラスからさらに障がいの強度別に全9つのクラスがあるんです。(詳しくはコチラから)それぞれの身体の機能に合わせたボードやライディングを見れることが魅力です。

パラサーフィンは、海(※今回は造波施設のプール)の中で行われるためサポートが必要なのですが、そのサポーターの方たちと一緒に2人3脚で行うスポーツであることも魅力のひとつです。
今大会では、水中に入るまでのサポート、水陸両用の車椅子を使ったり、また、波が来た際にボードを押してあげたり、ライディング後のサポートなど、たくさんのボランティアサポーターが安心安全に務めておられました。


「このイベントを続けることで、全国にユニバーサルな活動が繋がっていけば」

今大会についてお話を伺ったのは、一般社団法人ユニバ代表の田中慎一郎さん。『第1回静波パラサーフィンフェスタ』の主催者であり、普段はリハビリテーション専門医として病院で勤務するだけでなく、パラスポーツのドクターや顧問も多数担われています。また、パラスポーツを広めるためにご自身でも発信をされています。

「障がいがあっても楽しめる世の中にしていきたい、ユニバーサルな社会にしていきたいという想いで、ユニバを立ち上げました。私自身が元々サーフィンが大好きで、日本障がい者サーフィン協会の理事も務めさせていただいていることから、第一弾としてパラサーフィンの大会を開催することにしました。

実は、このフェスタは、KEENさんなど企業様のサポートだけではなく、クラウドファンディングで多くの個人のみなさまの支援ももらい実現できているんです。

今回クラウドファンディングでは500万円という目標金額だったんですけども、本当に多くの皆さまの支援のおかげで達成することができたことを心から感謝しています。そしてこの大会に予想以上の方が遊びに来ていただいて嬉しい限りです。

パラサーフィンは、サポートの問題だったりなかなか始めるのが難しいと思うので、今回は人口造波(ぞうは)施設で行うこと、サポート体制を整えることで安全な環境でサーフィンを楽しんでいただけるというのが特徴ですね。このイベントを来年以降、この先10年と続けていって、全国にユニバーサルな活動が繋がっていけばと嬉しいです」

大会が開催されたのは、静岡県にある静波サーフスタジアム。
人口の波が作り出せ、波の大きさも変えることができる施設です。


最高の笑顔。ピースフルな世界がここにはあった。

参加者やサポーター・見学者のみなさんが、ひとつひとつのプレイに大きな反応をされて会場は大盛り上がり。コンテストではあるものの選手同士も称えあい、会場は大きな一つの空間となっていました。田中さんの言う「ユニバーサルな社会」がそこには間違いなくありました。


参加した人も、サポートした人も、サーフィン初体験の人も!みんなが感じたイベントへの想い。

このイベントに参加されたみなさん、関わったみなさんは、どう感じ、どんな想いを抱いたのでしょうか。また、同じく障がいを持った方へ伝えたいことなど、インタビューさせていただきました。

秦秀名さん

15歳からサーフィンを始め、34歳のときに両下肢機能障害になった秦さん。

「最初はもうサーフィンはできないかと思ったけど、『なんだ膝立ちスタイルでもできるじゃん』って。今はパラサーフの選手としてやってるから、ありがたいことにボードなんかも提供してもらえてる。障がいを持ったからって内にこもるんじゃなくて、もっと楽しめる、何でもできるよって伝えたいね」


釣井景介さん

6年前に交通事故で車いす生活になった釣井さん。最初はもうサーフィンなんかできない、と道具も全部売ったそうです。

「パラサーフィンなんて知らなかったから、最初は本当に落ち込んじゃって。そんな時にサーフ仲間に誘われて始めました。まずはうつ伏せからやって、昨年から膝立ちにチャレンジしてます。みんな障がいが違うし、サポートの人たちもいてくれて、パラサーフィンをやって感謝の気持ちが増えましたね」


勝倉直道さん(写真左)

JASTメンバーでもあり、世界選手権でもメダルを獲得されている勝倉さん。

「僕は30年前に交通事故による大火傷で足が動かない。現役のときはプロを目指していたけど、怪我したときに『もう、これで終わりなのかなぁ』とかって気持ちにもならなかったね。サーフィンが好きでたまらなかったから、『また戻ってやる』って思ってね。今後の目標は当然世界チャンピオン!もうそれしかない。もうすぐ還暦だけどまだまだやってやりますよ」


小林征郁さん

交通事故で脊髄損傷で車椅子生活になって一度はサーフィンを諦めたが、訪れたサンディエゴで二―ボード(膝立ちスタイル)を教えてもらったのがきっかけでパラサーフィンを始めた小林さん。愛称は『マサさん』。

「海の中は自由なんです。僕ら車椅子の人にとって、陸上ではなかなかいうことを聞かない体も、海では自由になる。大自然に揉まれると不思議でハッピーな気分になりますよ。今後の目標は、日本でパラサーフィンをもっと拡げていくこと。個人的には世界一、チームでも世界一を獲りたいですね」


荒木太郎さん(写真中央)

大学時代からサーフィンをしていた荒木さんは2005年にサーフィン中のアクシデントで四肢麻痺になられたそう。会社を立ち上げながら普段は車いすラグビーで競技をされているそうです。

「大学時代のサーフィン仲間と来ました。ケガをしたとき一度は諦めるんだけど、またチャレンジできることを感じていただけたら。自分はサーファーの文化が好きで、みんな温かいですよね。今日は1本も乗れなかったので、来年またチャレンジしたいです(笑)」


藤原智貴さん

13年前にサーフィン中のアクシデントにより胸から下が動かないという藤原さん。介助犬の『ダイキチ』と共に。

「サーフィンでの事故ということもあって家族のことを考えてサーフィンから離れていたんですけど、昔からのサーフ仲間に誘われて少しずつ始め、2015年に世界大会ができたことで本格的にコンペに戻ってきました。パラサーフィンの魅力は、健常者のサーフィンと大きく違うクラス分けや、使うボードの違い、乗り方もそれぞれ違うことですね。一旦波に乗ってしまえば、僕らでもできることがたくさんある。この身体になると、海に入ること自体大きな壁です。このイベントを通じて、パラサーフィンが広まってくれると嬉しいですね。僕らができるってことは、みなさんは何でもできるんです」


富田宇宙さん(写真右)

パラ競泳選手の富田さん。東京パラリンピックでは銀メダル2つ、銅メダル1つを獲得されています。

「昨年11月に初めてパラサーフィンをやりました。パラサーフィンは、波を感じられるのが楽しいですね。なかなか自分の力で風を感じる機会って少ないので、そこが魅力です。僕は目が見えないので、インカムでタイミングを指示してもらっています。『5、4、3、2、1、GO!GO!』といった具合です。今日はうまく立てなかったので、またチャレンジしたいですね」


大城蓮さん(左)、小川泰輝さん(右)

今回ボランティアスタッフとして参加された2人にも伺いました。

大城さん「色んな方が分け隔てなく接しているのが居心地がいいです!」
小川さん「みんなでサポートし合っている環境が素敵です。将来教師を目指しているのですが、今日のこの経験がきっと活きると思いました」


【現代のもののけ姫Maco】こと 渋谷真子さん

サーフィンには初挑戦のMacoさん。初挑戦とは思えないほど、うまく波に乗られていました!
「人生初めての波乗りでしたが、サポートのおかげで波に乗ることが出来ました!普段は感じられない不思議な感覚でとても楽しかったです!車椅子、下半身麻痺になると海のアクティビティを楽しむことは簡単ではありませんが、今回のイベントのように水と触れ合える環境がもっと増えるように私も頑張っていきたいです!」

その他にも今回体験会に参加された方たちから「思った以上に波に乗れて楽しかった。またこんな機会があれば乗りたい!」、「初めての体験でワクワクしました!みんな楽しそうだったのが印象的でした」、「色んな障がいを持った人が大勢でやれたのが良かった。また参加したい!」などコメントをいただきました。


日本パラサーフィン協会 代表理事 山本力也さん

「この大会は日本のパラサーフィンにとって大きな一歩です。初めて開催したとは思えないほど素晴らしい大会ですね。僕自身サーフィンは義足になってから始め、最初はできないところからスタートしました。これからもっとチャレンジしやすい環境を作って、若い子たちにどんどん参加してもらいたいです。サーフィンの魅力を伝えながら選手層も厚くする。今後パラリンピックの種目にするためにも、日本での活動を活発にしたいですね。限界って、自分が作った自分だけの壁にすぎないので、とっぱらって殻を破っていきましょう!」


牧之原市 鈴本基久雄 市長

「牧之原市はサーフィンできる場所が沢山あります。そして静波サーフスタジアムもある。このイベントのお話しをいただいたときに、ぜひ協力させてほしいと伝えました。市としても協賛させていただき、医療スタッフの派遣なども整えました。静波は駐車場が波打ち際に近いところも特徴です。今後は、静波サーフスタジアムと外波との両方で行える大きなイベントになっていけばと考えています。今後パラリンピックの種目になったとき、このイベントに出た人からメダリストが出ると嬉しいですね」


イベントテーマソングに体が揺れる。パラサーフ表彰式も行われました。

イベントでは、東田トモヒロさんによるライブも行われ、会場全体がフェスのように!終盤、スペシャルゲストとして今大会にも出場された「JAHLI」こと生方亮馬さんとのセッションも大盛り上がり。
ライブの最後の曲として「第1回 静波パラサーフィンフェスタ」のテーマソング『Let you release』も披露されました。

今大会にも出場された小林征郁さんも出演する『Let you release』のミュージックビデオはコチラから。


イベント最後はパラサーフィンコンテストの表彰式。みなさんいい笑顔です。


「誰にとっても天井のない生き方を」KEENの理念を再確認

私たちKEENが掲げる「誰にとっても天井のない生き方を」というコンセプトが、このイベントで見事に体現されており、微力ながらサポートさせていただけたことを嬉しく思います。

今回インタビューする中で、チャレンジする大事さ、そして可能性は無限大であることを学ばさせていただきました。チャレンジする人を応援するだけでなく、私たち自身もまたチャレンジをして、誰かに勇気を与えられるようになりたいですね。

また、イベントでは、「足に力が入らないからバックストラップのないサンダルだと脱げてしまう」、「足の力がいらないゼラポートが履きやすい」、「視覚障害を持っているとつま先はかなり危険でKEENのサンダルが役立つ」など、大変参考になる意見もいただきました!

今回のイベントには日本でパラサーフィンの普及活動をしている3つの団体、一般社団法人日本パラサーフィン協会(JASO)さん、Naminicationsさん、Japan Adaptive Surf Team(JAST)さんがサポートされていました。

もし、パラサーフィンに興味を持たれて「やってみたい」と思われたら、ぜひ各団体にお声掛けされてみてください。JASOさんは千葉県、Naminicationsさんは神奈川県、JASTさんは関西圏を中心として活動されています。

一緒に世界を変えよう!