いろんな選択肢があるって伝えたい。<br>多様性について考えよう。
いろんな選択肢があるって伝えたい。<br>多様性について考えよう。

いろんな選択肢があるって伝えたい。
多様性について考えよう。

 

(このブログは、2022年のインタビューを元に再構成しています)

6月は「プライド月間」です。1969年6月から始まったセクシュアル・マイノリティの差別に立ち向かう運動をきっかけに、6月は『プライド月間』と呼ばれています。アメリカや日本をはじめ、世界各地でセクシュアル・マイノリティ、LGBTQ+の権利や文化、コミュニティーへの支持を示す活動が盛んにおこなわれています。

誰もが自分らしくあるために、自分という存在にプライドを持って生きていく。そしてお互いにその存在を認め合っていく。「誰もが天井のない生き方を」そんな願いを込めてKEENは今年もプライド月間をお祝いしています。

KEEN JAPANは、「LGBTQを含めた全ての子どもがありのままで大人になれる社会」を目指し、活動する認定NPO法人ReBitさんの活動に共感・賛同し、2021年よりReBitさんのファン・そしてサポーターとなりました。そして、今年もその活動を応援しています。

日常でもソトでも、自分らしく生きていくために

KEENは、アウトドアはすべての人のためにあると信じています。2003年の創業以来、出自や性別、世代、個性を超えて誰もが、アウトドアをより身近でアクセスできる場所にしていくことをミッションに様々な活動を展開してきました。

でも、実際には自分自身の居場所をアウトドアに見出すことが難しく、快適にすごせていなかったら?私たちはそんな社会を変えていきたい。もっと学んでいければと、ReBitのダイバーシティキャリア管理者/サービス管理責任者である石倉摩巳さんと、事務局長兼キャリア事業部シニアマネージャー中島潤さんにお話を伺う機会をいただきました。

中島潤さん(左)と石倉摩巳さん(右)

トランスジェンダー男性(出生時の割り当て性は女性で、今は男性として生活している)の石倉さんが、ソトに出かける際に、LGBTQ当事者が困りやすいこと、それとどう向き合ってきたかを語ってくれました。

(以下、敬称略) 

ー アウトドアでの悩み、というのはありましたか?

石倉:以前は「外に遊びにいくこと自体」がハードルでした。自分の好きな服を着た時に、周囲がどう思うだろうか、ということが自分自身不安で着たい服が着れなかったし、友達も僕が着替えで気を使うだろうからと海に誘いにくかったみたいです。トイレも周りの目が気になってなかなか行けなくて友人たちに一緒に探す時間を取ってしまって申し訳なかったし。本当は、ピンクや赤が好きなんですけど、当時は、それを勝手に女の子カラー”だと思い込んでいて、その色の服が着られなかった。自分で自分の天井を作ってしまっていました。今は、こうやって好きな色の洋服を着ることができています。

中島:僕も下に着ているものが透けるのでは、自分には似合わないかも、と不安で、白が着れなかった。でもある友達が、「きっと似合うからよかったら着て」ってプレゼントしてくれたのが、今着ている白いTシャツ。「似合うよ」と言う一言が背中を押してくれたんです。

ー 友達として誘う時にコツ、みたいなものはありますか?

石倉:いろんな選択肢があると多様な人が一緒に楽しめると思うんです。海なら、泳ぐだけではなく、砂遊びとかバーベキューとか別のアクティビティーに誘ってくれたりするだけで、ソトにでる気持ちの面でのハードルが下がります。

ハード面だと、自分の場合、だれでもトイレとかの施設が増えるとすごく行きやすくなります。こうした施設があるという情報をキャッチできて、「自分にはいろんな選択肢と可能性がある」って気づくと、自分も楽しめるって分かっていくんだと思います。

中島:例えば、「トランスジェンダーだと海に行くのは大変だろう」と決めてしまうのではなくて、その友人を誘う時に「一緒に海にいきたいと思っているんだけど、着替えとか、どうしたらいいかな?」と聞いてくれたら、「じゃあ、近くの宿をとろうか」とか「泳ぐ以外の遊びもしよう」とか知恵が集まってくると思うんです。

石倉:そこを話し合うこと自体も楽しんでほしいですよね。「このお店って共同トイレがあって、さらに料理がおいしいんだよ」とか、プランを考えるところも一緒に楽しめる。

中島:それって、LGBTQのことだけに限らないな、と思います。この間友人と食事に行って「何か苦手なものがある?」と聞いたときに「実はアレルギーがあるんだよね」と教えてもらって、それまで知らなかったから開けてよかったと思った。それと同じことだと思うんです。普段会っていても本人に聞かなければわからないことってあって、その時ちょっとだけ想像力を働かせることで、全然違う景色が見えてくるって思います。

一緒にチャレンジできる人がいるから、一歩を踏み出せる

ー アウトドアだけでなくLGBTQ×働くと言うテーマについてもお伺いしたいとおもいます。ReBitさんに寄せられた相談の声も含めて、社会の仕組みや制度が壁になって生じるLGBTQ当事者のみなさんの日本社会における困難をお教えいただけますか?

中島:就活においてもLGBの42%、トランスジェンダー(T)の87%が性のあり方に由来した困難やハラスメントを経験してます。セクシュアリティを明かしたら不利になるのでは、ハラスメントを受けるのでは?履歴書の男女の欄にどう書けばいいのか?スーツは男性と女性のどっちを着れば?と、そもそものスタートラインに立てないという悩みもあります。

就職後も、異性愛を前提にした社内の雑談や福利厚生の制度とか、男女に分けられている更衣室とか、会社の中で知らず知らずに男女分けされていたりということに、困難やストレスを感じる方も多い。

そして、実はこの困りごとやストレスは、「働く」の前の段階、学校での生活の頃から課題となっています。学校で安心して過ごすことができないことや、ロールモデルが少ないことなどによって、子どもたちも働くことを含めた将来のイメージを持てない、という状況につながっています。

ーどうやったら、その見えないストレスを回避できると思いますか?

石倉:困った時に安心して相談できる人や場所が分かる、ということが大切だと思います。たとえば、個人でアライ(LGBTQの理解者・支援者の意)であることを示すために6色のレインボーを身につけたり、社内で『困ったらいつでも相談にのります』という担当者や部署が分かるようになっていたりするのがいいかなと思っています。

また、学校でも企業でも、LGBTQの人も一緒に過ごしているはず、という前提で、環境をインクルーシブにしていくという工夫も有効ではないでしょうか。カミングアウトを受けてから考える、ではなく、カミングアウトしていてもいなくても、困りにくい環境があるといいな、と思います。

いろいろな人が集まっている場所だからこそ、それぞれに自分の選択肢があるべき。そこは誰かに決められるものではないと思うんです。広い選択肢があり、それこそが平等なのだと思います。

全国300校でLGBTQの子どもたちも安心安全な学校環境を先生と一緒につくりたい!クラウドファンディングを実施中 

今、ReBitさんは、全国300校でLGBTQの子どもたちも、安心安全な学校環境を先生と一緒につくりたい、としてクラウドファンディングを実施しています。

ーこのクラファンには、どのような背景があるのですか?

中島:LGBTQは、約3〜10%、例えば学校の30人クラスに1〜3人はいると想定されているんです。でも、「先生にカミングアウトしたら『あんたはおかしい』って言われて不登校になった」「LGBTQをネタにした笑いが起きた時、誰も注意してくれなかった」・・・残念ながら、こんなことが学校で起きています。

LGBTQの68%が学齢期にいじめを経験し、70%が過去1年で学校での困りごとを経験するなど、学校はLGBTQの子どもたちにとって安全な状況とはいえません一方で、LGBTQ学生の93%が教職員にセクシュアリティ(性のあり方)に関する相談ができず、孤立している状況なんです。

学校環境を変えるのは、「ルール+ツール」。法律ができて、学校での取り組みが努力義務に。「でも、どうやって?」と悩む先生の背中を押したい。

2023年6月に、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(通称、LGBT理解増進法)が制定され、学校でのLGBTQへの取り組みが、初めて努力義務と規定されましたが、状況は変わりましたか?

中島:法律ができたことは一歩前進したといえます。しかし、学校での理解促進・相談対応・環境整備をどのように進めてよいか、国や行政から計画等が示されていないこともあり、「どう取り組んだらいいのかわからない」と学校や先生からたくさんのご相談が届いています。だからこそ、今、このクラウドファンディングをキッカケにして、みなさんと一緒に「学校での日常を変える」という目標に挑戦したいと思っています。

今回のクラファンが達成したら先生200名の声を元に作成した、学校環境づくりの実践事例や相談対応をまとめた「学校できることキット」の開発と教員育成を通じ、LGBTQも安心安全な学校を全国に広げていきたいと思っています。

クラウドファンディングの詳細はこちらです。ぜひ、皆様の応援をお願いします。

https://camp-fire.jp/projects/768171/view

二人にとって天井のない生き方とは?

― 最後にお二人にとって、「天井のない生き方」はどんなことか教えていただけますか? 

石倉:僕自身、トランスジェンダー男性として自己受容できるまで時間がかかりました。また、自分の選択肢が見えずにもいたし、この生き方しかないと諦めていたので自分の中で天井を決めていたんだと思います。でも、いろんな経験や機会を通して「自分の選択肢ってこんなに広いんだ」「自分に天井はないんだ」「自分の希望する道を行くかどうか選ぶことができるんだ」と思えるようになりました。それこそが、天井のない生き方だと思います。そして、そこにたどり着くまでの時間そのものも大事。だから時間かかってもいいし、選択肢は、沢山あるんだということを発信していきたいです。

中島:ほんとそうだよね。僕もLGBTQを含めた全ての子どもがありのままで大人になれる社会になってほしい、ということが、「天井のない生き方」とイコールかな。ReBitはもともと学校という場所を安心できる環境にすることから発信を始めたけど、社会に出たときに自分らしく働けなかったり、大人になったらそうはいかないと思わせてしまったら、あなたのままで大丈夫って自信を持って伝えられない。

だから私たち大人自身が社会の天井を勝手に決めない、その人のまま生きられる姿を見せることが大事なんだよね。社会も企業も作っているのは人だから、誰かが変わることって、じつは社会が変わることだと思う。

自分に誠実に生きる人、クラウドファンディングで応援してくれている人、ともに社会を変えたいと思っている人がこれだけいるんだよと伝えることが誰かの希望につながって欲しいと思います。

 

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