何かが無駄になるのっていやですよね?私たちももちろんそうです。
だからこそ、私たちは長持ちするものを作り、コーヒー豆を入れる袋から、中古のパラクグライダーまであらゆるものを製品に変えています。KEENではこれを「目的のための再利用」と呼んでいて、私たちにとってすでにスタンダードになっています。―米国ポートランドにあるKEEN本社の90%以上が再利用素材を活用しているんですよ。
この「目的のための再利用」は、わかりやすく言うと素材を再利用して第2の人生を与える「アップサイクル」のことですが、目的はそれだけではありません。アップサイクルには、石油化学製品や、バージンマテリアル(未使用・未加工の原材料)の使用を削減するだけでなく、埋め立てられる廃棄物も減らすという大きな役目もあるのです。なぜこれが大きな役目と言えるかというと、あらゆるゴミがメタンを生成し、メタンは二酸化炭素の28〜36倍の温室効果をもたらすから。ゴミが集まった埋立地ではメタンが大量に発生し、人為的なメタン排出源としては化石燃料、農業についで三番目に大きいものとされているのです。
だからこそ、シューズ作りを通じてより良い地球環境づくりを目指す私たちは、シューズ製造工程から環境負荷を低減するだけでなく、いかに埋立地のゴミを増やさないかも問われるのです。私たちはそれを意識した製品を<HARVESTコレクション>(ハーベストコレクション)」として展開しています。これは、以前から取り組んでいる「Detox The Planet」イニシアティブのひとつです。
植物ベースのソールは、クオリティはそのまま。でも地球環境負荷を低減
私たちが廃棄物を「収穫(Harvest)」して作った最初の製品は、15年前(2007年)に米産業の産業廃棄物を使用したものでした。それ以来、私たちは自動車に使われていたエアバッグを回収してバックパックやトートバッグ、メッセンジャーバッグや財布に変え、廃棄されたデニムをシューズに変えてきました。不用となった生地をアップサイクルして作られたコーヒー豆用の袋を、さらにアップサイクルしてバッグをつくり、「これまでで最もリサイクルしたビーチサンダル」と題したサンダルもつくりました。(共に日本未発売)
最近では、農業廃棄物になる殻、葉、茎などをPU素材に配合した植物ベースのソールユニットを新開発。石油化学製品をアウトソールで51%、ミッドソールで35%、植物由来の素材に切り替えることに成功しました。この新開発のソールは、2022春夏コレクションで展開するウィメンズ商品の『ELSA SNEAKER Ⅴ(エルサ スニーカー ファイブ)』、そして、メンズ商品では天然コットンのキャンバススニーカー『ELDON SNEAKER(エルドン スニーカー)』と『ELDON SLIP ON(エルドン スリップオン)』に採用されています。数年前より発売中の、70%に再生可能な生物ベース素材を使ったフットベッド(日本未発売)なども含めて、足元がどんどん良いものいいもので覆われるようになってきているのです。
KEENが一般ごみよりも産業廃棄物に着目している理由。それは、米国では固形廃棄物の97%が農業と工業に由来するもので、その約2%しかリサイクルされていないからです。(出典:post carbon institute)
だから私たちが石油化学由来のポリウレタンに代わり、農業廃棄物の植物ベースのポリオール(ポリウレタンの材料)の一部に採用することは、実はすごく画期的なことなのです。しかも、植物ベースのソールユニットはこれまでのものと同じ感触、パフォーマンス、耐久性を備えています。同じクオリティを保ちながら、地球環境負荷の低減にもつながっているのです。
「KEEN Harvest 認証」プログラムで、1足のシューズでアップサイクルされている廃棄物量を透明化します
私たちはこの取り組みを推進するにあたり、みなさんにそれぞれのシューズにどれだけ廃棄物が使われているかを正確に伝えたいと思うと同時に、他のシューズメーカーにも参加してほしいと考えました。そこで、「Detox the Planetイニシアティブ」の一環として、「KEEN Harvest 認証」というプログラムを構築し、どれだけの廃棄物がシューズにアップサイクルされているかを透明化し、オープンソース化することを予定しています。
2022年度中に開始を予定しているKEEN Harvest認証プログラムでは、3つのレベルの認証を行う予定です。アップサイクル素材の使用率が50%以上でゴールド、25%以上でシルバー、10%以上でブロンズです。こうすることで、みなさんが購入するシューズ1足に、どれだけの廃棄物がアップサイクルされているかを知ることができます。
まだこのプログラムはスタートしていませんが、このゴールド基準をクリアした最初のシューズが、車のレザーシートをアッパーの80 %でアップサイクルした『HOWSER HARVEST(ハウザー ハーベスト)』。同様に車のレザーシートをサンダルにアップサイクルした『HOWSER HARVERT SANDAL(ハウザー ハーベスト サンダル)』もまた、ゴールド基準をクリアしています。
私たちが望んでいるのは、この取組みと学びを他ブランドと共有し、共に改善してゆくこと。真の変化を生み出すためには、私たちは協働して取り組まなければなりません。
KEEN EFFECT担当のエリック・バーバンク(KEEN US)は「私たちのHARVEST認証プログラムは、ファンに透明性を提供するためであり、同時に他ブランドが産業廃棄物問題に取り組みやすいように支援し、奨励するためのものでもあります」と述べています。
「私たちは引き続きアップサイクル素材の研究とモデル全体の改良を続けます。そして、PFCフリー同様、このプログラムをオープンソース化する予定です。これはKEENに競争上の優位性をもたらすものではありません。私たちが望んでいるのは、この取組みと学びを他ブランドと共有し、共に改善してゆくことです。真の変化を生み出すためには、私たちは協働して取り組まなければなりません」
他ブランドが「収穫」に参加してくれたとしても、この取組みで完全な循環が実現できるわけではありません。でも、その第一歩にはなります。廃棄物について見直し、生物由来のリサイクル材料をより多く製品に使うことで、ものを作っては捨てるという直線的な思想をより円環的な思想に近づくことができます。私たちは、廃棄物からシューズを作ることで、廃棄物を埋め立ての運命から救い、物事をより良い軌道に乗せたいのです。
廃棄物の埋め立てが減り、ヴァージンマテリアルの使用が減り、温室効果ガスの排出が削減されること。これは、地球環境のための3つのベネフィットです。そして、それが広がっていくことを私たちは望んでいます。
Detox the Planet イニシアティブ
「Detox the Planet イニシアティブ」は、サプライチェーン内の有害な化学物質を積極的に特定して除去し、安全で効果的な代替物質に置き換えるために2012年に設立されました。私たちの製造プロセスはPFCフリーで、無農薬で自然な防臭素材を使用しています。また、レザーワーキンググループ認定の環境に配慮した皮なめし工場とのみ提携しています。でもやるべきことはまだまだあるのです…