2022年に各地で発生した豪雨災害によりお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様に謹んでお見舞いを申し上げます。
大きな被害を受けた、青森のりんご園
9月。KEENのスタッフは2回に分かれて青森県弘前市を訪れました。弘前市では、8月3日と9日に立て続けに襲った記録的な豪雨によって、りんご農園が冠水しており、KEENの長年のパートナー団体である『OPEN JAPAN』が活動を続けていました。KEENスタッフも、その活動に参加させていただくために弘前を訪れました。
KEENのボランティアの第1陣が訪れたのは、弘前市大川中桜川。岩木川に面しており、河川敷を利用したりんご農園の一帯です。ここでは、たくさんの農家さんの土地がありそれぞれ栽培されていますが、多くの農園で被害を受けていました。岩木川から氾濫した水は、りんごの木のてっぺんまで浸かり、りんご農園は5日間浸水したままだったそうです。
私たちが訪れたときには地面も乾いていましたが、辺りを見て回ると、堤防は決壊し、石や砂、川から色んな物が流れてきており、たくさんの木が倒れているのが見てとれました。
倒れてしまったりんごの木々
決壊し流れてきた石や砂、見渡す限りの落ちたりんご
豪雨による被害は1年後、2年後まで続く。
所有されるりんご園が大きな被害を受けた三上弘憲さん。三上さんのりんご園には約400本の木があり、毎年20万個以上のりんごを収穫しているそう。今回の豪雨による被害の状況を教えていただきました。
「8月3日の雨ではここくらいまで浸かって。木の半分よりちょっと上くらいまでかな。土壌菌が入っていない木の上のほうはまだ何とかなるかなって思ってたけど」1回目の大雨のあと、泥を取り除く作業を進めていた矢先の8月9日に起きた2回目の豪雨。「2回目でてっぺんまで。もう全部ダメやね。春に植えた苗木も腐ってきてる」
8月9日の大雨での浸水は、この棒の先が指す位置まで、りんごの木を飲み込んだ
ここまで水に浸かったのかと、言葉で聞くだけでは分からない、相当な雨だったことが分かります。岩木川とりんご農園の間にある堤防、そして、りんご農園と住宅地の間にもさらに高い堤防となる道路があったことで、この場所はダムのようになってしまったそうです。また、一部地域では家屋の被害もありました。
豪雨被害が全国各地で多発した、2022年。このような状況も、ニュースとして少ししか取り上げられず、弘前のこの現状を知る人は多くはありません。でも、その被害はあまりに大きなものでした。
「りんごの木がホルモンバランスを崩して、今、花が咲き始めたんよ。普通は春に咲く花が今。咲き方も春と違ってムラがある。ただ、今咲いてるということは来年春は花が咲かんけん、実もつかないだろう」
豪雨被害でりんごは全滅。そして、来年もまた完全には収穫できないという現実。被害にあったのは「今」だけでなく、2年後、3年後まで続くのです。
ホルモンバランスを崩し、花を咲かすりんごの木
できることを、できる場所で、できる人が。
KEENのスタッフが訪れた数日間。広い農園の大きな被害を目の前に、ほんの少ししかお手伝いができませんでした。「こんな数日でも来ることに意味があるのだろうか?」という申し訳ないような気持ちを、OPEN JAPANのひーさんこと、肥田さんに伝えると、「まずは、現場に来ること。そして感じて。それを皆に伝えてほしい」と、できることから始めることが何よりも大切と教えてくださいました。
倒木をチェーンソーでカット。短くしてりんご園の外へ運び出します。
KEENのワークシューズ(安全靴)は、完全防水に加え、つま先にアルミやカーボン製のプロテクションを備えており、チェーンソーなど危険な作業時にも安心です。
地面を覆いつくすほどの、川から流れてきた大量の茅葺やごみ。
みんなの力で綺麗になっていったりんご園
「知ってくれるだけでも嬉しい。まだ諦めない」
今回のボランティアを取りまとめる、ひろさきボランティアセンターに勤める鶴見さんにお話しを伺いました。
ひろさきボランティアセンターの鶴見さん(右)
「今回の豪雨では、弘前では300ヘクタールが被災しました。りんごだけでなく様々な作物を作っているので、そちらにもボランティアが入ったりしています。遠くは鹿児島や岡山、愛知からも来ていただいています。
でもやっぱり時間が経ち、ボランティアの数は減ってきています。土日でのべ100名くらい来ていただいているのですが、それでもピーク時の半分くらいです。ただ、今来ていただいているほとんどの方が何回目かのリピーターさんなのは、嬉しいし、ありがたいですね」。
弘前市の高校に通う生徒や市民に加え、他県からも総勢50名が集まった。
「そして今後、弘前市による一般ボランティアの公募については9月25日をもって閉設して、民間主導でボランティア公募を行うことになっています。農家さんと話していると、最初は諦めている人が多かったのですが、こうやってボランティアの方がいろんなところから来ていただけ、だんだんと笑顔になってきているのが分かります。
『諦めてたけど、やっぱ頑張らねばなぁ』と農家さんも言われてましたから。
だから私たちも、りんごが収穫できるようになるまでは、民間プロジェクトになろうとも、支援しようと思っています」
2日目の作業の終わり際。りんご農家の三上さんからは、こんな言葉が。
「もう心が折れかけてたけど、こうやってボランティアで来てくれて、助けてくれるなんて本当にすごいなぁって。時間が経っても忘れずにいてくれるだけで嬉しいです。また頑張ろうって思えます。本当にありがとうございました。」スタッフは三上さんと堅く握手を交わして、農園を後にしました。
社員同士のボランティアの「たすき」をつないで
仕事をしながらだと、ずっと現地に滞在することは難しい。でも、社員同士で情報を共有し、次の社員につなぐことはできると、2019年の災害の時に学びました(当時のブログはこちら)。今回も微力ですが、各地の被災地でKEEN 社員が自分たちのできることを、という思いで、社員同士「たすき」をつないで活動を続けています。参加したスタッフたちは口々に「現場にいくと、こんなにも大きな学びがあるんだ」と話します。
「数日の作業では、広い農園のほんの一部しか作業が進みませんでした。でも、実際に活動に参加させていただいて、農家さんや、市役所のみなさん、ボランティアに参加されたみなさんと、色んなお話を聞くことで、できることを少しでもやることの大切さを改めて学びました」
第2陣のスタッフは、隣町である鰺ヶ沢町での支援作業にも参加
「初めての災害支援ボランティアに、参加してきました。力も体力もない私が、、、とひるんでいましたが "できる範囲でのお手伝い" をしてきました。経験してみてみないとわからないこと、現地に行って初めてわかること、たくさんの学びで、参加できて本当によかったと思っています」
「発災から、一か月ほど経っているので、見た目の街は日常を取り戻しているように見えましたが、いざ、現場にはいると被災の爪痕が大きく残っていました。時間の経過とともに、お年寄りやハンディキャップのある社会的弱者と言われる方が、取り残されてしまう現状や、一般の人では手に負えない災害を目の当たりにしました。遠く離れた我々は短期でのサポートしかできませんが、それでも現地に行けば、マンパワーだけでなく、『遠くからこうやって来てくれるだけで心が支えられるんだよ』というひーさんの言葉もいただいて、少しだけ被災された方の心にも寄り添えたような気がします。今回もOPEN JAPANの方と話をする中で、私自身の学びも多く、何かに、誰かに少しでも貢献できたことはとても貴重な経験になりました」
チカラを一つにすれば、きっと前にすすめる。
いつも、災害支援の現場に行くと、同じことを思います。それは、「一人一人の力は小さくても、集まれば、きっと大きな力になっていく」ということ。どんなに小さな力でも、続けていくことの大切さを改めて感じています。
OPEN JAPANや多くのボランティアの方の活動で少しずつ前に進んだりんご農園。OPEN JAPANの弘前での活動はこの9月末に終了し、先日おきた台風15号による大きな被害を受けた静岡へと活動の場を移すことになりました。静岡のニュースを知った弘前の方々から「行ってあげて」と言われたとのことです。KEENの社員ボランティアスタッフも、活動地を静岡へ移し、その活動を継続していきます。
一般社団法人OPEN JAPAN
日本国内で発生した災害の現場にいち早く駆けつけ、被災された方の心に寄添い、臨機応変な災害支援を行う『一般社団法人OPEN JAPAN』。OPEN JAPANは、日本全国にネットワークを持つ団体や個人が集まった、災害支援を行う非営利組織。泥出し、炊き出し、重機を扱った活動、車を被災された方へのカーシェアリング、その他さまざまな現場に必要な生活支援を行っています。 そして、単なる支援活動に留まるのではなく、地域や社会が良い方向に変わっていくことを目指しながら、今日も縁の下から活動を続けています。
➤OPEN JAPAN 災害支援公式サイトはコチラ
公式サイトでは、OPEN JAPANの活動費へのご支援を募集しています。
KEENとOPEN JAPAN
キーン・ジャパンは 2011年からOPEN JAPANと連携を開始。近年では2018年の「西日本豪雨支援」、 2019年の「九州豪雨支援」「台風15号、19号災害支援」、2020年の 「令和2年7月豪雨災害支援」、2021年の「熱海土石流災害」や各地の 豪雨災害などでの緊急支援活動をサポート。寄付金額がダブルになる マッチング・ドネーションをはじめ、チャリティ販売、靴の無料配布、社員の支援活動参加など、さまざまなカタチで活動を支援しています。