新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい始めた3月。KEEN は、グローバルキャンペーン“Together we can help(あなたと一緒だから、できること)”(以下TWCH)を立ち上げました。TWCHキャンペーンでは、3月下旬に全世界で10万足のシューズを新型コロナウイルスに立ち向かう方々に、お届けしました。そしてタイの自社工場の一画では、シューズの材料として調達していた生地をアップサイクルしたマスク製造をスタート。
VIDEO
4月下旬より全世界で15万枚を、日本国内においては、NPO団体等を通じ、被災地、ホームレス状態の方、児童養護施設や女性用シェルターなどへお届けしました。
WEAR MASKS. LOVE OTHERS.マスクをつけて、みんなを守ろう
今回マスクを皆さんにお届けしたのは、新型コロナウイルス感染拡大防止に何かKEENも貢献できないか?とい思いから。「WEAR MASKS. LOVE OTHERS.マスクをつけて、みんなを守ろう」をアイコトバに、日本国内では災害支援活動を行うOPEN JAPANやDRTの職員やボランティアスタッフ、また彼らを通じて被災者の皆さまへ。西表島では、スーパーマーケットや民宿で働く方、ガイドの方など日々人と接する方や、竹富町役場など地域を支える皆さんに。みらいの森からは児童養護施設に暮らす子どもたちへ。
そして、ホームレス状態にある方の支援を行うビッグイシューさんと、ホームレス状態の方に向けた炊き出しなどを行って支援する6団体、そして、行き場を失った若い女性たちを支援する1団体を通じ、彼らの支援活動の際に当事者の方へマスクを届けていただきました。
その時、ホームレス支援団体さんに色々からお聞きした事、それは『新型コロナウイルス感染防止対策として外出自粛=STAY HOMEが求められる中、STAYすべきHOMEがない人々が存在する』という事実でした。
「STAY HOME」といわれる中、肝心の「HOME」がない人々
厚生労働省の2019年度調査によると、全国の路上で生活するホームレス状態の方の数は4,555人。そして、安定した住居がない状態でネットカフェ等を利用する、いわゆる「ネット難民」は、都内だけで一晩に4,000人いると推計されています(2018年東京都調査)。
更に、テレワークの普及により、家庭内での様々な形の暴力が増加傾向にあり、家の外に居場所を求めている人々が増えているという報告もあります。“STAY HOME”が求められる今も、多くの人が不安な日々を過ごしています。
社会的に『弱い立場』にある人が、一番影響を受けている
KEENが10年以上に渡り、靴の提供などを通じサポートを続けている『ビッグイシュージャパン』。ビッグイシューは、ホームレス状態の方々に雑誌の独占販売を委託し、自立を支える活動を展開しています。ビッグイシュー事務所の佐野未来さんは、「今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、社会的に『弱い立場』にある方が一番影響を受けている。」と言います。
KEENのマスクはビッグイシュージャパンの販売者さんにも提供させていただきました。そしてホームレス状態の方に向けた炊き出しなどを行って支援する5団体、そして、行き場を失った若い女性たちを支援する1団体※を通じ、彼らの支援活動の際に当事者の方へマスクを届けていただきました。
※下記団体にマスクをお届けしました。
▼ホームレス状態の方を支える団体 ・有限会社ビッグイシュー ・ビッグイシュー基金 ・認定NPO 法人自立生活サポートセンター・もやい ・特定非営利活動法人TENOHASI ・NOJIREN ・特定非営利活動法人 山友会 ・ひとさじの会
▼生きづらさを抱える女の子を支える ・特定非営利活動法人BOND プロジェクト
職も住まいも失い、路上で暮らさざるをえない人びと
ホームレスの方を炊き出しなどで支える「もやい・新宿ごはんプラス」の大西連さんは語ります。「感染予防のための小中高校等の一斉休校や、イベント等の自粛および小売店などでの営業時間の短縮等により、収入が減少したり、失業する人が増加しています。2019年の調査によると、東京には野宿の人が約1,000人、ネットカフェで生活する人が約4,000人存在するとも言われています。今後、感染終息までの期間が長引いた場合、さらに多くの人びとが経済的に困窮したり、住まいを失う恐れがあるのです」。
また、特定非営利活動法人「TENOHASI」の事務局長を務める清野賢司さんも同様の問題を指摘します。「新型コロナウイルスの影響で、飲食店などが休業し、残り少ない仕事も取り合いの状態で、所持金が底をつきかけている人が増えています。今、炊き出しには昨年平均より約40%増の210人以上が集まります。それに対する行政の支援策も、当事者の立場に寄り添っているととても思えないわかりづらい制度設計と、厳しい条件が課せられており、支援を受けられない人、支援を受ける事を躊躇する人たちを生み出しています」。
家庭内暴力などにより、家の外に居場所を求める女性たち
さらに、さまざまな形の暴力により家の外に居場所を求めている人びとも多くいます。「新型コロナウイルスの影響で、逃げ場がどんどんなくなっている若い女性たちがいます」と語るのは、今回マスクをお届けした、「BONDプロジェクト」代表の橘ジュンさん。
女性の支援活動を行う『BONDプロジェクト』のスタッフのみなさん (左下の活動写真はイメージです)
BONDプロジェクトは、様々な困難を一人で抱えている10代20代の女性の相談にのり、場合によってはシェルターで一時保護を行うなど、若い女性たちの保護活動を続ける団体です。
「先日、両親から虐待をずっと受けてきた女の子から連絡をもらいました。在宅勤務になった両親と一日中一緒に家に居るしかなく、苦しい思いをしているという相談でした。彼女は、支援施設に入所する予定が、新型コロナウイルスの感染拡大で入所が延期になってしまったのです。こういった事例は沢山あって、受け皿がどんどんなくなっているのです。こういう状況だからこそ、女の子たちの話を聞きながら、居場所を見つけていきたいと思っています」。
居場所を失ってしまった人びとへの緊急的な支援を
感染予防と生活防衛という視点から、生活に困窮し住まいや居場所を失ってしまった人びとへの緊急的な支援が求められています。
「新型コロナは、誰も経験したことがない災害のような状況です。例えば、野宿している時に、隣の人がマスクもしないで寝ていたりすることが、どれだけ当事者の人の恐怖になっているか。それだけに、今回のマスクの提供はありがたかったです」と語るのは、ビッグイシューの佐野さん。
ビッグイシューの販売員さんも、マスクをしっかりと着用してくださっています
「マスクの品薄はもちろんですが、売っていても高騰しているマスクを、生活に困窮している方が購入できないという問題もありました。ビッグイシューの販売者さんだけで見ても、マスクをしていないことで購入を控える人が増え、販売数は減る。販売者さんにとって生活に関わる問題ですから」と言います。
コロナ禍によって顕著化してきた、社会が持ち続けてきた課題であるこの問題に向き合い、こういった弱い立場におかれた人々を支えることが、感染被害を最小限に食い止める鍵になると考え、STAY HOMEが難しい人々にマスク配布を行いました。
Together we can help - あなたと一緒だから、できること-
KEEN は、2003年の創業当時から「個人とその家族のつながりを尊重すること」、「地球に生きる市民として、他文化やアイデアを受け入れ、よりよい未来に向けて貢献していくこと」を理念に展開してきました。
新型コロナウイルスと向き合っていかなければならない今、この理念を基に、私たちにできることを考え、行動していきます。そして、なによりも、みなさんのお気持ち、一つ一つが、行動につながっていく、“Together we can help(あなたと一緒だから、できること)”、そんな気持とともに、この活動を続けていきます。